スポーツ動作を向上させるメンタル

メンタル⇒「精神状態」「考え方」

この記事のタイトルは、導入のために分かりやすいよう「メンタル」という言葉を使っていますが、

 

お話したいのは、「精神状態」や「考え方」についてです。

 

「メンタル」という言葉は手垢が付いてしまっており、それぞれ独自の解釈が定着していると思われるため、

 

メンタルという言葉ではこの先の理解を妨げる可能性があり、この言葉を一旦脇に置いてもらいたいと思います。

 

 

練習とは何か?上達とは何か?

 

さて、まずお話するのは、スポーツ動作の上達において「精神状態」が重要である理由です。

 

まず、私たちが「練習」と呼んでいるものは何でしょうか。

 

生物学的、脳科学的にみれば、「上達」とは、脳や神経の回路が作りなおされることです。

 

これによって、これまで出来なかった動作ができるようになったり、よりスムーズに無意識にできるようになっていくわけです。

 

 

私たちは上手くなるために「練習」しています。

 

ですが、私たちは直接自分の脳や神経の回路をいじれません。

 

なので、「こういうことをすれば回路が変わるかな?」と経験的に予想できることをやっているわけです。

 

(サイト冒頭に書いたように、それすら考えずに形骸化したパターンをひたすら繰り返している惨状があります)

 

 

 

「学習」の仕組み 「学習」と「練習」

ここで、練習と似ている「学習」の仕組みについて説明します。

 

「学習」とは、生物全般に備わっている生命維持のための機能です。

 

人間以外の生物にもあるのが「学習」です。

 

犬の「お手」などを思い浮かべてください。

 

生きるために(エサをもらうために)必要な情報(飼い主の行動パターン)を記憶し、今後の行動を変化させるわけです。

 

これにより、環境(人に飼われる)の変化に適応して生き残れる可能性が高くなるわけです。

 

学習の機能は、もちろん人間にも備わっています。

 

学習は、しようと思ってするのではなく、身体が必要だと思ったものを必要なだけ記憶して活用するものです。

 

このように、「学習」とは、生物が生き残るために、環境に適応するための受動的な機能だといえます。

 

 

 

 

一方、「練習」と呼ばれるものの多くは、必ずしも生存に必要ではない、極めて人間的な活動を達成するために行われます。

 

つまり、「学習」よりも積極的に意思を持って、何かを成し遂げるために行われるものだということです。

 

「学習」も「練習」も自分を変化させる点では同じですが、

 

「練習」のほうが生物的な必要性が薄い目的に向かって、意志の力で行っている分、効果を出すのが難しいといえます。

「練習」の効果を左右するのは精神

 

「練習」の成果を左右するのは、精神状態です。

 

 

「学習」の仕組み上、身体が生物学的に必要だと感じたことしか定着しないことを説明しました。

 

「練習」もこの「学習」の仕組みの上に成り立っています。

 

つまり、「学習」の仕組みをうまく利用して組み立てなければ、望むような成果が出ないのです。

 

 

 

それどころか、身体がめんどくさがっていると、身体がラクできるように勝手に工夫し始めます。

 

これが悪く出ると「変な癖」の原因となります。

 

「こんな練習する意味あるの?」「めんどくせえ」と思って練習しても、ほとんど身にならない理由はそういうことです。

 

練習で身につく度合いは、身体が必要だと思った割合に比例すると考えてください。

 

 

ですから、練習をする前に、精神状態を整えることが重要になるのです。

 

また、精神状態が整うような練習法を組み立てることも重要になります。

技術の習得を左右する「考え方」の指針

技術向上につながる考え方

 

  • 「自分の最高の力を引き出すことさえできれば、球速を戻すどころか最高記録にも到達できる」  ○
  •  

  • 「そのために、今はとにかく最高の状態を作ることに集中する」 ○
  •  

  • 「目先の球速や結果にはこだわらない」 ○
  •  

  • 「かつてフォームが崩れてしまったのは、運に任 せていた部分(脆弱性)が崩れてしまったからで、それも含めて実力だ」 ○
  •  

  • 「過去は過去。今の自分を育て、工夫し、球速が上がっていくのを楽しむ。」 ○
  •  

  • 「一見停滞に見えるが、実はこれまでのフォームの脆弱性を解決し、これまでできなかったことを取り入れ、飛躍するためのチャンスだ」 ○
  •  

  • 「技術の向上、自分が思い通りに変わっていくこと、そのための練習が楽しくて仕方がない」 ◎

 

技術向上を妨げ、自信を蝕む考え方

 

  • (草野球・スピードガンなど、他人と比べうる状況で) 「自分の力はこんなものじゃないのに、出せないことが悔しい」 ×
  •  

  • 「こんな初歩的でヘンテコな練習を見られ、ヘタクソだと思われるのが恥ずかしい」 ×
  •  

  • 「いいところを見せて、一角の人物だと思われたい」 ×
  •  

  • 「失敗して恥をかいたらどうしよう」 ×
  •  

  • 「ストライクに入らなくて(三振して)恥をかいたらどうしよう」 ×

 

 

いかに上のような状態を維持し、下のような状態を避けるかが、重要です。

 

良好なメンタルを維持することで、一気に球速を伸ばせる身体の動かし方に「気付く」確率が高まります。