内部感覚の重要性について

内部感覚の重要性について

投球時の外から見えるフォームより大事なのが、内部感覚です。

 

 

内部感覚は、身体内部の状態の感覚のことです。

 

 

感覚は、外部感覚である五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)だけではありません。

 

 

平衡感覚、回転軸、重心などと表現されるものも内部感覚の一種になります。

 

 

運動においては、「動いたときの感じ」のことだと思ってください。

 

 

内部感覚は本人にしかわからない完全な主観ですので、人それぞれ違います。

 

 

脳の働き、身体特徴、育ち、運動経験、投球動作の経験、イメージ力、価値観、考え方、五感の感受性

 

 

といったあらゆる要素の違いが、すべて影響してきます。

 

 

つまり、内部感覚=主観は誰一人として同じことはありえないということです。

 

 

まず、この前提を押さえてください。

 

 

そして、スポーツ動作の練習をするとき、最も重要なのは、この点です。

 

 

このサイトを含め、誰かからの指導や情報というのは、他人の感覚に基づいたものであって、

 

 

指導や知識や情報よりも自分の感覚が一番重要なのは、このような理由から当たり前のことなのです。

 

 

 

動画や鏡などで見れば、明らかに正しいフォームや姿勢のはずなのに、感覚的にしっくりこなければ、

 

 

見えない部分で何かが足りなかったり、ずれているということになります。

 

 

それは、どこかの部位の筋力かもしれませんし、神経系かもしれません。

 

 

とにかく、その時点で分かることは、そのままではいけないということです。

 

 

内部感覚は繊細なもの

ある種の内部感覚は、集中して自分の身体や感情や精神を観察しないとなかなか気付くことができません。

 

 

たとえば、うるさい指導者や先輩がいるときに練習すると、

 

 

その場を取り繕ったり、やり過ごすことに注意力が奪われてしまい、繊細な内部感覚に集中することは難しくなります。

 

 

すでに内部感覚を把握し、練習で何度も繰り返し再現できるようになっている人は、そういったモード(ゾーン)に入るスイッチを持っているものです。

 

 

そういった一流の選手であれば、そういった環境でも実力を発揮することができますが、

 

 

現時点で満足のいく内部感覚を持っていない人にはまず無理だと考えてください。

 

 

大雑把な内部感覚は、ほとんどの人が把握できるので、まずはそういったものをヒントにしていきます。

内部感覚から真の問題を推理する

集中していなくてもある程度わかる感覚は、悪い感覚のうち、強めのものが多いです。

 

 

痛み、違和感、寒気、手足の先の冷え、質の悪い疲労感、うっかりミスの増加などです。

 

 

これらに気付いたら、身体からのメッセージではないかと、まず考えてみることです。

 

 

毎日の練習でこういった点に注意していると、メッセージの共通のパターンがだんだんと分かってきます。

 

 

 

「カーブを投げる練習になると、手先が冷える」とか、

 

「監督近くが見ていると投球中に違和感がある」とか、

 

「守備練習だけなぜか簡単なミスが増える」とか、

 

「走りこみのあとにすごく疲れる」とか

 

 

そういったパターンが分かってきます。

 

それらの状況で、身体が悪い反応をする原因が何か見極めてください。

 

ここからは、推理力です。

 

 

⇒カーブを投げるときだけなのか?フォークやチェンジアップのときはどうなのか?変化球全般のコントロールに不安があるのか?特定の変化球の投げ方が悪いのか?

 

⇒監督からの評価を気にしているのか?怒られるのが怖いのか?ライバル投手よりいいところを見せたいのか?

 

⇒捕球に苦手意識があるのか?送球に自信がないのか?ランナープレーに自信がないのか?チームメイトに罪悪感やプレッシャーを感じているのか?守備が嫌いなのか?
 どんなミスが出やすいのか?

 

⇒どこを走っているときに疲れるのか?どれくらい走ったときに疲れるのか?前後の練習はどんなものだったか?走る前の食事や排泄はどうだったか?

 

 

そういうことを考えていくうちに、問題を起こしている心の原因と、その対象が特定できてきます。

 

 

特定したら9割はよい方向に持っていけると思ってください。

 

 

こういった問題は、意識して取り組まないとなかなか前に進みません。

 

 

場合によっては、自分の心が積極的に隠している場合もあるからです。

視覚と思考に頼りすぎない

「視覚と思考」は内部感覚と相反する関係にあります。

 

 

一応、視覚のすべてが内部感覚と相反するわけではありません。

 

 

視覚のうち、なにかを凝視するような目の使い方は、特に思考との相関性が高くなります。

 

何かを分析するというスタンスで、脳と眼が最適化されるからです。

 

 

同じように視覚でも、ボーっと全体を見るような状態は、内部感覚よりの眼の使い方となります。

 

 

なので、練習中は、必要最低限の焦点を合わせる必要があるとき(投げる直前に捕球者を見る、打つ直前、捕る直前に球を見る)以外は、ボーっとした眼の使い方のほうが適しているわけです。

 

 

というか、目的に集中していれば、ボーっとしていても、眼が勝手にそう動きます。

 

 

ですが、野球の練習の現場では、とにかく緊張状態やまじめに見える態度が強いられるため、そういった眼の使い方をできる選手はほとんどいません。

 

 

 

【2016年11月追記 眼の使い方について日頃考えていたことをほぼ代弁してくれている記事を見つけたため、紹介します。
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視力の低いイチローと山田哲人が示す、「眼がいい」の正体

 

以下、重要な部分を一部抜粋:


スポーツに必要な眼の使い方
何が問題かというと、選手の眼の使い方にあるのだという。
「一生懸命に集中しようと思って、文字を読むときのような見方をしてしまっているのです。ほとんどの選手がその傾向にあります。つまり、捉える対象を見すぎてしまっているのです。」

「日常的に文字を読んだり、書いたり、仕事をしているときの眼の使い方をしていては、スポーツをする際の眼としては高いレベルに到達できません。動物が獲物を狙うような見方でないといけない」

なぜならプレーする際、文字を処理するときの眼の使い方をしてしまえば、その時点で身体の動きが止まってしまうからである。

「文字を読もうという見方は、脳の“意識”まで上っているわけです。意識を通過した見方では、身体の反応が遅くなる。

ミスをしたり、調子が悪くなったりすればするほど、『もっとしっかり見なくては』という見方になります。つまり、間違った集中を始めてしまうんです。そうではなく、身体に対して情報を入れるという眼の使い方、見方にならないといけない。多くの選手は、眼の使い方が身体の動きを変えるとは思っていないのです

 

 

◆K-1史上最強、圧倒的な強さを誇るジョルジオ・ペトロシアンの眼の使い方

 

(1)
ペトロシアン1
攻撃直後の隙にローキックの反撃を受けそうなところ。ペトロシアンは相手の上半身を満遍なく見ていて、キックの方向を見てはいません。

 

(2)
ペトロシアン2
キックの方向を見ていないにも関わらず、相手の脚を正確にキャッチ。

 

(3)
ペトロシアン3
キックを取るだけでも神業なのに、同時に重心や態勢も整えています。 そして直後に反撃に繋げます。

 

※簡単そうに見えますが、世界上位の選手のキックをポンポンキャッチできる選手は世界でも数人しかいません。

 

最強のペトロシアン選手や、それに並ぶブアカーオ選手は相手が誰であれ、キックを防御するどころか「ほとんど」キャッチします・・

 

この2人の試合が過去一回だけありました。こちら
この2人の動きは、重心移動、バランスのとり方、下半身の使い方、眼の使い方、意識の置き方、間合いのとり方、呼吸の整え方、メンタルコントロール等を学べる最高の教材だと思います。

 

 

この例でもわかるように、コンマ何秒で反応が求められる世界であっても、対象物を凝視する必要はないのです。

 

 

ピッチングの本筋から逸れるので、眼の話はここではこれくらいにとどめます。

 

 

 

 

 

思考しながら動作するのもおススメできません。

 

 

思考は動作が始まる前に終わらせておく必要があります。

 

 

意識するポイントがあるなら、動作を始める前に完全にイメージ化することです。

 

 

動作中は内部感覚に注目します。

 

 

まじめな選手ほどこれができません。

 

 

とにかく頭で考えて、反省ポイントがないかどうか、そんなことばかり思考しています。

 

 

誰かに責められる前に自分で反省点を述べようと、そんなことばかり考えている人もいます。

 

 

これは本末転倒です。そもそも、考える材料が足りないのです。内部感覚という最大のヒントを見逃しているからです。

 

 

それで、あーでもないこーでもないと、全然重要じゃないことを反省するのだけ得意になってしまいます。

 

 

元々分析力があるのですから、まずは内部感覚に注意することを覚えれば、どんどん上達していきます。