回転半径を大きくして速度を増すことはできない
最近のピッチング理論やバッティング理論をみると、
身体を工夫して使うことで、回転半径を長くし、スピードをアップさせるというものが散見されます。
肘を伸ばして使うとか、身体の軸と垂直に使うとか、腰から上を腕のように使うとかいろいろありますね。
その根拠として、回転運動は中心から半径が大きいほど先端のスピードが増すという原理をあげています。
これは本当でしょうか?
どんな投げ方をしても回転速度が変わらなければ、これらの理論は正解になります。
つまり、実際は回転速度が変わるので不正解ということになります。つまり嘘です。
腕を伸ばした状態とたたんだ状態で、全力で横に回転してみてください。
腕をたたんでも伸ばしても中心の回転速度は変わりませんか?
明らかに変わりますよね・・・。
腕を伸ばすと明らかに中心の回転は遅くなります。
半径が長いものを同じ速度で動かすには、その分エネルギーが多く必要になるからです。
同じ身体で同じ並進運動からは、同じエネルギーしか生まれません。
同じエネルギーなので、回転半径を大きくすると、スピードが遅くなります。
結果として先端の速度は大して変わらないことになります。
ただし、短い半径で回転するのに必要なエネルギーを10、長い半径で回転するのに必要なエネルギーを100とすると、
身体のエネルギーが50あるとすれば、50以上エネルギーを使う半径で回転したほうがよいということは言えます。
50~100の間であれば、トータルで先端の速度はほとんど変わりませんので、あとはその他の要素で決めればよいです。
少しでも中心の回転が遅くなるような半径があれば、十分力を活かせているというわけです。
以上のことから、通常の投げ方なら無理に回転半径を長くとる必要はないといえます。
身体が生み出すエネルギーの総量を増やし、エネルギーを無駄なくフル活用するフォームにしていくことが重要なのです。