全力で投げない
全力で投げることは百害あって一利なしです。
これが、プロレベルの投手なら別です。
彼らの言う「全力」というのは、素人の考える全力とはまったく違います。
素人の全力とは、ただの力みのことです。
脱力のところでお伝えしたように、本当に速い球を投げるためには、投球中はなるべく脱力しなくてはいけないのです。
スピードを調整するのは、踏み込みの早さとか、身体のしなりの深さとか、握りの深さや向きであって、筋力ではないのです。
したがって、全力で投げれば球速アップするという思い込みから、まず変えてください。
これは練習のときから意識しなくてはいけないことです。
日本の練習の現場では、なかなかこのような意識はつきません。
練習中は、軍隊のような服従的な態度が求められるからです。
涼しい顔をして楽そうに投げていれば、「もっと一生懸命やれ!」と注意されます。
一生懸命というのが何を指すのか知りませんが、そういう態度を見せることが暗黙の前提になっているのです。
その結果、選手は、なにをするにもとりあえず形だけの「全力」を行うようになります。
そして、力み癖が身について思ったようにうまくならないのです。
うまくなるのは、脱力しても結果を出すから怒られないような、元々センスが高い余裕のある選手だけです。
うまい選手はますますうまく、下手な選手はぜんぜんうまくならない構図があるのです。