リリース

「リリース」全てはこの瞬間のために

 

ボールに直接触れているのは4本の指と手のひらです。

 

そして全身から受け取ったエネルギーを、最後の最後にボールに伝えるのは、

 

人差し指と中指。この2本の指です。

 

 

 

「指先」の役割は、「ドラマ」の例えでいうならば、ドラマの放送を私たちに届ける、

 

「テレビ」や「電波塔」と例えればよいでしょうか。

 

これらがダメになっては、全てが台無しになってしまいます。

 

 

ところが、これほど重要な「リリース」で、10kmも20kmも球速を落としてしまっている人が多いのも事実です。

 

引っかかるリリースと抜けるリリース

 

リリース時の球の発射のパターンを調査すると、

 

大きく分けて「引っかかる」リリースと「抜ける」リリースがあることがわかります。

 

 

メジャー選手のリリースと一般高校生のリリース(どちらも直球)の動画を比較してみてください。

 

リリースを詳しく確認するため、1,000コマ/秒程度のスロー動画を見つけてみました。

 

 

一般高校生

 

メジャー選手
(埋め込み不可のためリンク)

 

 

腕の最大外旋時からの腕の軌道と、ボールの発射方向を示すと、

 

一般高校生

 

一般高校生のリリース1
一般高校生のリリース2
高校生のリリース3

 

メジャー選手
メジャー選手のリリース1
メジャー選手のリリース2
メジャー選手のリリース3

 

このようにパッと見でも、高校生のリリースは「抜け」気味であることが分かります。

リリースで何が起こっているのか

 

さらに詳しく「抜けるリリース」の状態を見ていきましょう。

 

 

手からボールが離れていく様子です。(画像編集が雑で申し訳ないです・・)

 

○高校生のリリース
高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り高校生のリリースコマ送り

 

順に見ていくと、「ボールが2本の指を転がって発射している」ように見えます。

 

動画でもその視点で何度も確認してみてください。

 

これを「転がりリリース」と呼ぶことにします。

 

 

○メジャー選手のリリース
メジャー投手のリリースコマ送りメジャー投手のリリースコマ送りメジャー投手のリリースコマ送りメジャー投手のリリースコマ送りメジャー投手のリリースコマ送りメジャー投手のリリースコマ送りメジャー投手のリリースコマ送り

 

一方、メジャー投手のリリースは、ボールが指を転がることなく発射されています。

 

こちらも、動画で今一度納得がいくまでご確認ください。

 

これを、「グリップリリース」と呼ぶことにします。

 

 

「すっぽ抜け」という現象がどのように起こっているか、少しずつ分かってきました。

 

次に、すっぽ抜けが起こる身体的要因を考察します。

手首と指の動きの差

 

「転がりリリース」のように、ボールが転がってしまうのはなぜなのでしょうか?

 

転がりが発生しているときの手首に注目してみます。

 

高校生のリリースコマ送り

 

この時点で、既に手首が後ろに曲がり気味になっています。

 

また、メジャー投手の同じ投球フェイズと比べると、ボールが上を向き、握りこみも浅くなってしまっています。

 

高校生のリリースコマ送り

 

次のコマはリリース直前ですが、ボールの(斜め前方への)慣性力に握りが負けていることが明らかです。

 

ボールが指の進行方向ではなく、前方↑方向に流れてしまっています。

 

高校生のリリースコマ送り

 

リリース時を見ると、腕の進行力とボールの(遅いスピードで留まろうとする)慣性力との板ばさみに負け、

 

手首は前方下に動こうとしているものの、指が追いつかず、指が後ろに反ってしまっています。

 

つまり、ボールが指を離れるまでのコンマ数秒で、ボールが↑方向の力と慣性力で指を伸ばし、前方への指の力の何割かがボールが転がるために使われ、指とボールの方向がさらにずれ、ボールが上方向に抜けることが、

 

「転がり」の原因であり、「抜け」の原因ということです。

 

高校生のリリースコマ送り

 

 

 

「グリップリリース」では、

 

メジャー投手のリリースコマ送り
メジャー投手のリリースコマ送り
メジャー投手のリリースコマ送り
メジャー投手のリリースコマ送り
メジャー投手のリリースコマ送り

 

このように、手首の背屈がほとんどなく、リリース時にはむしろ手首がまっすぐになっています。

 

これにより、指の力の向きが投球方向に揃い、力強いリリースが実現しています。

 

これが、昔から言われる「スナップを効かす」「ボールを切る」の真に意味するところだとしたら合点がいきます。

 

 

どのようにグリップリリースを習得するか?

 

さて、客観的な仕組みは分かりましたが、それをどうやったら実現できるのでしょうか?

 

原理や理屈が分かったからといって、安易に行動につなげると痛い目を見るということは、投球力学についてで説明したとおりです。

 

まして、リリース時は最もスピードがでていて、自分でもどうなっているのかよく分からないいわば「神の領域」です。

 

例えば、「とにかく手首をまっすぐにしときゃいいんだろ?」というような考えは大いに間違うリスクがあるでしょう。

 

リリースの大部分は、私たちの無意識の領域で行われているからこそ、

 

無意識の運動パターンどう形成されているのか、ある程度知っておかなくては危険です。

 

 

そもそも、多くのアマチュアが「転がりリリース」になってしまうのはなぜなのでしょうか?

 

そこが無意識領域を解明する突破口になります。

原因はやはり練習にあった

 

私たちは日常でボールを投げることはありませんので、癖が出来るとしたら練習しかありません。

 

日ごろの何気ない練習、「キャッチボール」のやり方こそが、リリースの回路を形成しています。

 

スポーツ動作を向上させるメンタルも参照のこと。

 

 

私たちがキャッチボールをするとき、最優先していることは何でしょうか?

 

それは、「コントロール」です。

 

多くの練習では、何よりも「相手の胸に取りやすいボールを投げる」ことが優先されています。

 

 

手っ取り早くボールをコントロールするには、「転がりリリース」が便利です。

 

多少全身の体勢を崩しても、指先の「転がり中」にコントロールを調整する保険が効くからです。

 

 

さらに、「転がりリリース」は、指や手首への負担が少なく、楽に投げられることも、癖になる原因です。

 

「グリップリリース」では、指先に激しい摩擦が生じるため、マメや水ぶくれができやすく、

 

そういったことからも、無意識に身体は負担を避けようとします。

 

 

練習中の(無意識も含めた)優先順位が

 

①「コントロール」
②「なるべく楽に」

 

という順序になると、

 

小手先のコントロールができず、指に負担のかかる「グリップリリース」は真っ先に動作の候補からはずれ、

 

自然に習得することはまずありません。

 

 

そうして、一度「転がりリリース」で動作を覚えてしまうと、

 

「いまさらノーコン状態に戻って1から練習すること」に抵抗ができていき、

 

「グリップリリース」がさらに難しくなっていきます。

 

 

こういった練習環境にも関わらず、

 

グリップリリースをマスターしている人は、(多くの場合投手で)「速球」を心底求める状態に一度はなったことがあるのだと思います。

 

 

その意味で、リリースは投球の土台、原点ともいえるでしょう。

 

 

「速球に必要なリリースと、コントロールさえすればよいリリースは、全く別物」ということへの認識のなさ。

 

このことが多くの人が球速が上がらないことに繋がっていたのです。

 

リリースの土台を作りなおすには

 

「グリップリリース」をした経験がない場合、

 

思い切って一旦土台を崩して組みなおすしかありません。

 

今までコントロールできていたものが全然出来なくなりますし、指先の感覚もこれまでの感覚と全然変わってきます。

 

つまり、胴体の傾きや踏み出し幅、腕のスイング軌道などが全て変わってきます。

 

 

練習法については、全身のフォームを一から作りなおす練習法を参考にしてください。

 

その中でも、どこでも楽にできて、リリースだけを素早く習得できる、室内練習は特におススメします。

 

 

ムリヤリ手首や指で押すのではなく、

 

「腕のスイング軌道」や、「リリースタイミング」や「2本の指の使い方」「その他全身のポジショニング」によって、

 

ベストな身体の位置、ボールの発射タイミングを見つけることが重要です。